運が味方したのか、誰にも見つかることなくここまで来られた。
わたしが求めていることは。
「……自由がほしいんです」
正しいことがどんなことかわからない。
わたしの願いは悪かもしれない。
それでも……自由の先に幸せがあるのではないかと願ってしまう。
「自由ねえ」
春日さんはゆっくり目を細める。
「じゃーまず、俺と自由に遊んでみよ」
カチッとシートベルトを外し、わたしのものにも手を伸ばしてくれる。
春日さんとの距離が近付くと、苦味のある香りが肺を満たした。初めての感覚にくらりと頭が揺れる。
なんだか……癖になる香りだ。
「りんー? 俺に見とれてないで降りてね」
「ぇあ……す、すみません」
指摘されると恥ずかしい。
春日さんが救世主だから、こんなに心が乱されるのだろうか。
くすっとからかうように微笑まれた。余計に居心地が悪くなる。
「こういう出会い、まさに南蜘蛛って感じだな~」
「わたしのような人が他にもいるんですか?」
「超能力者はさすがにないけどね~。違法なことに手を染めてる人間は山ほどいるよ」



