網川君の彼女は、お値段の張る“ユーリョーブッケン”。


「というものが、3年前までありました。気をつけて」

「・・・はぁ」


・・・ほっとした。


そして、理科の先生のほうを向いて。


「遅刻にはしないであげてください」


それだけ言って、くるりと向きを変えて出ていった。



――その足音が完全に聞こえなくなるまで、クラスは静まっていた。


「・・・びっくりしたー!」


最初に沈黙を破ったのは、お決まりのように晄だ。


それにつられるように、ざわざわと教室が湧く。


未だに入学式でしか見たことがなかった、伝説級の教頭先生に・・・まさか、会えるとは。


入学式では遠かったけど、今回はそれに比べてかなりの近距離だ。