網川君の彼女は、お値段の張る“ユーリョーブッケン”。

まるで呼吸器官をまるまるぜんぶ、糸で締め付けられてるような、そんな息苦しさ。


「、っ・・・」


じっと見つめられている。


次に何を言うのか、全く予想できなくて怖い。


そんな時間が、何分も続いた気がした。


――実際には、数秒だったのかもしれない。


少なくとも私には、かなり長いことのように感じられた。


――でも不意に教頭先生が口を開いたことで、その時間は終わる。


「廊下での衝突事故をふせぐために、チャイムが鳴り始めた時点で廊下にいる生徒は全員遅刻扱いとなります」


・・・え。


多分、クラスみんなの心の声が重なった。

この学校にそんな校則あったの。


――教頭先生がにっこり笑って。