網川君の彼女は、お値段の張る“ユーリョーブッケン”。


絶対赤くなってる顔を隠そうとして、窓際の席だからって外を見るのも当然のこと。


つい頬杖をついて、雲の形が面白いからって空を眺めちゃうのもしょうがない。


しばらく蘭ちゃんを見たり、外を見たりしていたら眠くなってきて、うつらうつらしちゃうのも別に・・・


「清水沙月!」


とつぜん、ハリのあるバリトンの声が教室中に響き渡った。


ああ、やばい、先生に見つかった、強面イケメンで有名な理科教師27歳、黙ってると軍人かよってくらいド迫力・・・よりによってなんでこの人。

なんて考える前に、私の体は勝手に動く。


完璧な敬礼をするために。


「っ、はいすみません!」


私の威勢の良い声が先生の直後に響いた。


「でも蘭さんも寝てます!」


そして正当な抗議。


ビシッと隣を指差すと、

「言いがかりはやめてほしいなー沙月さん」


・・・あれ?さっき見たときは夢の中にいなかった?


ふつーに起きてる蘭さん、意地悪そうな目でこちらを見てますね。