網川君の彼女は、お値段の張る“ユーリョーブッケン”。

さっきまで少し甘えるように聞こえた声は、今は危険を感じるような、違う種類の甘さを含んでいる。





――不意に、手首を掴んでいた手が離れた。



・・・チャンスだ。


一気に彼を押してベッドからおりよう、と思った。


でも、そんな私の甘い考えは全部わかりきっていたらしい。


私が行動に出る前に今度は片手で、彼は私の両手を押さえていた。



「っ、ぇ?」


力をいっぱいにしてみても、彼の手は離れそうにない。



・・・どんだけ力強いんだ、いつも無気力のくせして。


また春夜が小さく笑う。


「無理。沙月の力なんて可愛いもんだから」


・・・何だか馬鹿にされているような。


ちょっとだけ睨む。


女子の握力を馬鹿にする奴は許さない・・・っていう念を送ったつもりなんだけど。


「なに?反抗すんの?」


余裕な態度を崩さない春夜にちょっとムカつく。


っていうか、さっきよりたのしんでるような?


「・・・だったら何」


「痛くするかも」


突き放すように言ってみたのに、返ってきたのは意味不明な言葉。