網川君の彼女は、お値段の張る“ユーリョーブッケン”。

「・・・っ、」


上から彼に覆いかぶさられて、手首も掴まれたまま。


「・・・っや、」



少し怖くなって、顔を外へ向ける。


それを、彼があいているほうの手で彼のほうへ向けようとするけど、私は掴まれていない右手で阻止しようと試みる。


だけど力では敵うはずもなく。


結局身動きがとれない状態で、視線もしっかり合わせられる。



一言で言うなら――



逃げ場がない。



「――だって、」


「沙月」



「嫌、絶対沁みる。それやるんだったら帰る・・・っ」


「沙月」


促すように私の名前を呼ぶ春夜は優しい瞳をしていて。


幼い子どもが諭されているような構図に、思わず視線を逸らす。