網川君の彼女は、お値段の張る“ユーリョーブッケン”。


入口にあった書き置きによると、あと最低でも1時間は会議・・・って、先生大変だなぁ。


「春夜、先生いないんだったら帰ろう?」


そもそも、何で私を連れてきたのかもよくわかってない。


ひとつ考えられるとしたら、朝の傷・・・?


いや、でも気付くほどひどくはないと思う。


じゃあ、先生に用があったのかな?



首を傾げていると、春夜は私の言葉を無視して、私の腕をつかんだまま中に入った。


「春夜?」


「そこ座って」


指されたのは一番近いベッド。


トーンが真剣だったから、素直に座る。


春夜はいろいろと棚を開けて、ガーゼとかを持ってきた。


まるで私を手当てするみたいに・・・ん?




・・・いやいや、まさか。


「怪我してるとこ、ちゃんと見えるようにして」



――確信。


・・・気づいてたんだ。


春夜に言われて、画鋲の端っこで切っちゃったところを見せた。