網川君の彼女は、お値段の張る“ユーリョーブッケン”。

「授業なんか受けなくても、沙月なら余裕だろ」


「春夜はよかったね、授業態度が成績に入ってる学校じゃなくて」


「沙月も寝ればいーのに。時間の有効活用」



・・・じゃああんたは何のために登校してるんだ、っていう言葉を抑えて次の授業の準備をする。


「私はどっかの誰かさんとは違って真面目なんですー!」


「・・・じゃーそんな真面目な誰かさんにお呼び出し。保健室まで」


「、え?」



次の瞬間、腕を掴まれたかと思えば、手に持ってた教科書を机に置かれて教室を連れ出された。


次は移動教室だから、クラスのみんなはあまりこちらを気にしてない。


「っ、ちょっと!」


「なに。あんま大きい声出すとみんな見るけど」


「・・・もう見られてるけど」


噂で流れている二人が一緒に――というか私が春夜に引っ張られてるだけだけど――いるから、

もう廊下の人たちは注目してる。


でも春夜はそれを全部無視してるみたいで、気にせず私を引っ張っていった。






結構な力で引っ張られて着いたのは本当に保健室。


「失礼しまーす」


保健室はカーテンで薄暗くなってて、完全に無人。


休んでいる人もいなくて、全部がきちんと整えられている。