英恵さんがキャーッと飛び跳ねる。

「やだ真桜さんたら…っ、真桜さんたら!そ、それは、それは一体どんなものなんですか!?」

「それがですね…普通の黒のボクサーとかだと思うじゃないですか」

「ええ、違うんですか…!?」

「意外に派手な、ひょ」


……私は、『ひょ』の後に続く言葉を最後まで発することは叶わなかった。


「……!」


後ろから伸びてきた手に口元をガッと鷲掴みされたからだ。


「……お疲れ様でございます、お嬢様」


耳元に降るその低い声に、ヒヤッと背筋が凍る。


「せっ、せい、せい、聖司く……っ」


いつの間に背後に!?


「キャーッ、鶴城くんだわ、生の鶴城くんだわ、キャーッ」


はしゃぐ英恵さんに聖司くんはニコッと会釈すると、グイッと私の顔を自分の方に向けさせる。


「……おやおや、お顔の隅に出来物ができておいでですね。お薬を塗って差し上げましょう。どうぞこちらへ」


私はその時、初めて自分の頬がミシミシ言う音を聞いた。