──……私たちが通う私立櫻乃学園は、お嬢様と執事見習いが通う特別な学校だ。
お嬢様学科と執事学科があって、入学するとランダムで選ばれたお嬢様と執事がペアになって行動する決まりになっている。
授業内容は普通の学校と同じ科目の他に、お嬢様学科では茶道や華道、マナーなどを学び、執事学科では執事に必要な所作を学ぶ。
ペアになったお嬢様と執事は、それぞれの授業以外の時間全て、行動を共にする。
「真桜さん、真桜さん!」
「あ、ごきげんよう英恵さん」
同じクラスの赤穂英恵さんが、女子トイレを出たところで話しかけに来た。
ちなみに彼女のお父さんは全国展開する雑貨店『Aco』の会社の社長さん。
「見ましたか?今日の茶会の結果!また鶴城くん一位でしたね…!」
「あー、でしたねー」
英恵さんはほぅ…と頬を赤くさせる。
「本当に真桜さんが羨ましいわ。専属の執事が鶴城くんだなんて。容姿端麗、勉学もスポーツも全て学年トップで、性格も穏やかでお優しい……本当に少女漫画から飛び出した王子さまみたいな方じゃないですか…!」
「今一部フィクションが入ってましたね」
「え?今、なんて?」
「いいえ、なんとも」
私は曇りなき完璧笑顔を英恵さんに手向ける。



