その時、少し冷たい夜の風が吹いた。
聖司くんが「少し冷えますね」と言う。
まだ動揺しながらも、そうだね、と返そうとしたとき
聖司くんに手を引っ張られた。
「!?」
トン、と受け止めた聖司くんは私を胸の中におさめると、ギュッと抱きしめる。
聖司くんの体温に包まれて、一気にキャパオーバーする。
「ちょ、だ、!?聖司くん……!」
聖司くんがまたクツクツと笑う気配がする。
「お嬢様は簡単に熱くなるんですね」
「!?」
やっぱりからかわれてる…!?
くっそぉ〜…もういい!
せっかくだからこのハグはおいしくいただきますから!!
私の脳内なんか知らない聖司くんが、耳元で囁いた。
「もっと熱くして差し上げますね。お嬢様」
……ひどい。
それだけで私はしっかり熱くなってしまうというのに。
なんて罪な人だろう。
「……ありがとうございます、執事様……」
この時の私は
まさか、しびれを切らした聖司くんに改めて告白されることになるなんて
まさかまさか、本当に執事とお嬢様を辞めて、彼氏と彼女になるなんて
まったく、全然、思いもしないのだった。
fin.



