「本日は大事な、大事な茶会にございます。それにそのように窓から飛び出されては大変危険です。大切なお嬢様の身に何かあってはご両親に顔向けできません。どうぞお降りください、今すぐに」

…うん。今のは、

〝評価の高い大事な茶会をすっぽかすとはどういう了見だコラ親にチクるぞあとで山に埋められたくなければ三秒で降りてこいこのメス猿〟

の、意。

聖司くんの笑顔の奥に隠れる本音を、私は見て見ぬフリをする。

「あのね、聖司くん。私、苦いお茶はだめなんだよね。かと言って甘いお菓子も苦手じゃん?その上足がしびれるほど正座させられてさー…いる?茶会とかいう行事、いる?」

聖司くんはため息をついた。

そしていつものように、「いいですか、お嬢様」と決まり文句を言ってお説教を始める。

「お嬢様のような山猿系女性でも、卒業後も名家の名に恥じぬ振る舞いが出来るように成長していく手助けをする…それがこの、私立櫻乃学園なのです。茶会は普段の学びを学園長、先生方、並びにご来賓の方々に見ていただくためのものですから、決して軽んじていいものではございません」

聖司くんがつらつらと並べ立てたのはこの学校のパンフレットの文言とほぼ一緒。

てか山猿系女性ってなに?