……ドン!


顔のすぐ横で壁に勢いよく手をつかれたのは、カーテンが閉め切られた薄暗い理科準備室の窓横にある柱にて。

超至近距離で顔に影を落とす聖司くんが目をギン!と光らせた。

この体制はいわゆる壁ドンというやつなのだけど、私は今、胸がキュンッというよりお腹がヒュンッとなっている。


「人の個人情報をペラペラペラペラと……お嬢様のいかがわしい寝言を校内放送で流して社会的に殺してさしあげましょうか?あん?」


語尾にあん?てつける執事なんている?

これです。これが聖司くんの本性です。

とてもじゃないけど耳をすませてはくれなさそうです。

てかいかがわしい寝言ってなにかな、わたしなに言ってたかな恐ろしいな!


「すみませんすみませんほんの出来心ですすみません」

「次同じようなことしたらあのクソキモいうさぎ全部切り刻んでヤギの餌にしますからね」

「あああああそれだけはご勘弁ください聖司さまぁぁぁあ」


もうどっちが主人なのか分からないな?なんて疑問はとっくの昔に捨てていた。

こほんと咳払いしてニッコリ笑顔をこぼした聖司くん。

あ、これは説教タイムの始まりだ、と私の勘が教えてくれる。