さよならの続き

あの美しい桜には何の罪もない。
だけど嫌でも思い出してしまう。
あの時の冷たい瞳を。去り行く背中を。

「…桜並木の下で振られたことがある。それだけだよ」
「それは前に聞いた3年前の彼氏?」
「うん」
「そっか」

平静を装って答えたつもりだ。
そうじゃないと、陽太がますますこのことを気にしてしまう。
陽太は私の額にやさしいキスを落とし、抱きしめる腕に力を込める。

「桜が嫌でもいいからさ。俺がいること、忘れんな」
「うん」

少し汗ばんだはずなのに、陽太の身体はソープの香りがする。
その胸に顔を埋めた。

「…有梨」
「ん?」
「好きだよ」
「…うん、私も」

陽太はいつもやさしい。
つらい別れを経験したけど、そのあとにこんな出会いをもらえたんだから、神様に感謝しなきゃいけない。