ひと駅分の彼氏

☆☆☆

「ほんっと、食い意地がはってるよなぁ」


当時のことを思い出して真琴が笑う。


私は恥ずかしくなって顔が熱くなってきた。


「やめてよもう……」


真琴との春の思い出がお団子だなんて、なんだか悲しくなってきてしまう。


「もっと他にあったじゃない?」


「なんだっけ?」


そう聞かれて一生懸命思い出そうとしても、なかなか見つけられない。


春になると真琴と2人で出かける回数がグッと増えたのだけれど、そのどれもがなにか食べている記憶だった。


「……なんでもない」


結局食べている話しになると思って、私は途中で話を打ち切った。


顔を上げて車窓へ視線を向けると、景色は容赦なく過ぎ去っていく。