ひと駅分の彼氏

「すごーい、キレイ!」


ベンチが設置されている場所は桜を見下ろすことができる石垣の上だ。


ここも当然柵が設けられているけれど、その下に眺めることができる桜の海の邪魔はしていなかった。


「俺たちいつも桜を見上げてたもんな。こうして見下ろすことができるなんて、面白いよなぁ」


「そうだよね。このままジャンプしたら桜がクッションになって助かりそう!」


冗談半分でそんなことを言ってみたけれど、見下に広がっている桜はとても柔らかそうに見えてくる。


1度でいいからあの桜たちの中に身を投げ出してみたい。


きっとフワリと受け止めてくれるだろう。


心地よい妄想に目を細め、「そうだ! お団子食べないと!」と、我に返った。


「せっかくここまで来たんだもんね」


城跡の一番上まで登ってくるのは結構たいへんで、私達でも軽く息切れしてしまう。


さっき行ったとおり敵を登ってこさせないために工夫された石段は容赦なく体力を持っていくのだ。


私はベンチに座ってさっそくお団子を取り出した。


白いお団子には沢山の甘ダレが掛けられていていい香りがしている。