ひと駅分の彼氏

おばあちゃんは今私達のためにお菓子を用意してくれている。


「うん。思っていたよりもずっとちゃんとしてる」


私は心から関心してそう答えた。


同時にもしもこの家からおばあちゃんがいなくなってしまったらどうなるのだろうと考える。


古い家だからきっとすぐに朽ちてしまうことだろう。


だからこそおばあちゃんはこの家から離れないのかもしれない。


自分の思い出が沢山詰まっているこの家を、愛しているのだ。


「はい、おまたせ」


おばあちゃんがお茶と一緒に出してくれたのは真琴が持ってきた春風堂のおまんじゅうだった。


薄い皮に包まれているほどよい甘さのあんこがたまらないのだ。


白い皿に乗せられているそれを見て私は思わずゴクリと唾を飲み込んでしまった。


「紗耶ちゃんは昔から春風堂のおまんじゅうが大好きだったもんねぇ」


「うん! 今も大好きだよ!」


だから今日真琴が春風堂の紙袋を下げているのを見たときは驚いたのだ。