ひと駅分の彼氏

「はじめまして、先山真琴です」


真琴は背筋をピンッと伸ばして丁寧にお辞儀をする。


真琴を見たおばあちゃんは何度も瞬きをして私の手を握りしめた。


「まぁ! まぁ! まぁ!」


驚いたときのおばあちゃんは昔から『まぁ!』を3回続けて言う。


それは今も変わっていないみたいだ。


おばあちゃんはシワシワの両手で私の手を包み込み、頬を赤く染めて高揚している。


「これ、お土産です」


「お土産まで! まぁ! 本当にありがとうね」


おばあちゃんはニコニコと終始笑顔で私達を家にあげた。


広い日本家屋はやっぱり1人で暮らすには広すぎる気がして、私は室内を見回した。


キチンと手入れされている家具に、活けたばかりの花。


大きな仏壇にもちゃんとお供え物がされている。


「おばあちゃん、ちゃんとしてるんだね」


仏間にある大きな一枚板でできたテーブルの前に座り、真琴が小さな声で言った。