ひと駅分の彼氏

「真琴、遅いよ」


時計を見ると5分の遅刻だ。


真琴は顔の前で両手を合わせて「ごめんごめん」と繰り返す。


そして私の手を握りしめると「つめてぇ」と言いながら自分のコートのポケットの中に入れた。


暖かなポケットの中でギュッと手を握りしめられるともう、5分の遅刻なんてどうでもいいと思えてしまう。


頬は自然とにやけてきて、今日ここへ来て良かったと心から思う。


それから2人で簡単に食事をして、真琴の家に向かうことになった。


元々家は近かったようだけれど、小学校も中学校もギリギリで学区が違い、一緒になることはなかった。


高校に入学して初めて近所に住んでいるのだということがわかったのだ。


「お邪魔します」


緊張しながら玄関に入ると誰の靴もなかった。


「今日、両親はでかけてるんだ」


真琴が少し緊張した様子で言う。


私はそれがどういう意味なのかわからず、ただ笑顔で頷いた。