ひと駅分の彼氏

廊下に人はいなくてとても静かで、ここだけ異世界になってしまったんじゃないかと不安になるくらいだった。


そして、真琴が言ったんだ。


大きく息を吸い込んで、顔を真っ赤にして『俺と付き合ってください!』と。


その瞬間私の世界は変わった。


今まで地味で目立たなかった私の人生が、まさにバラ色に変化したのだ。


どうして私なんだろう?


私のなにがよかったんだろう?


何度も考えて首をかしげてきた。


実際に真琴にそう質問したこともある。


すると真琴は決まって怒った顔になって『自分の魅力に気が付いてないんだな』と、呆れたため息を吐き出した。


私にはやっぱり真琴が言っていることの意味がよくわからなかったけれど、怒らせてしまうことなのだと思って、もうその質問はしなくなった。


「紗耶!」


昔のことを思い出していると少し遅れて真琴がやってきた。