ひと駅分の彼氏

電話越しに聞こえてくる真琴の声に胸の辺りがジワリと暖かくなるのを感じる。


自然と頬が緩んで、受験でピリピリしていた気持ちが落ち着いてくる。


こういうとき、真琴のことを心から好きなのだと実感できた。


「どうしたの?」


『明日空いてないかなって思って』


そう言われて私は壁にはってあるカレンダーへ視線を向けた。


明日は12月25日。


クリスマス本番だ。


「空いているといえば空いてるけど……」


確かに予定は入っていないのだけれど、言葉を濁す。


今の時期予定が無いからと言って遊び歩いているわけにはいかない。


私も真琴も受験生なのだから。


『それなら出かけないか?』


ホッとしたような真琴の声が返ってくる。


「デート?」


『あぁ。毎日勉強勉強でさ、疲れるだろ? 気分転換しようぜ』


真琴からの誘いに私は二つ返事でOKを出した。


気分転換も立派な受験勉強の一貫かもしれない。


なによりクリスマスイブもクリスマスも彼氏に会えないなんて、寂しすぎる。


『じゃあ明日、クリスマスツリーの前に集合な?』