ひと駅分の彼氏

近くのドアが開いて数人の乗客がそこで下車した。


そして乗り込んでくる人々。


単語帳に視線を落としていたしかいの中に、青いスニーカーが見えた。


ハッと息を飲んで顔を上げる。


そこに立っていたのはヘッドフォンを頭につけた見知らぬ男性だった。


その顔を見た瞬間、少し落胆した気持ちになる。


でも……ヒラリとピンク色が視界に入ってそちらへ顔を向けた。


ピンク色のそれは桜の花びらで、まだ舞い散るのは随分と早い季節だ。


桜の花びらは私の単語帳の上に舞い降りるように落下した。


私はまばたきをしてそれを見つめる。


桜の花びらはドアから風が入ってきても、決して私の単語帳の上から離れようとはしなかった。


それを見て思わずクスッと微笑む。


真琴はまだ私のことを心配してくれているみたいだ。