だってあれば真琴から私への最後の挨拶。


素敵なサプライズだったんだから。


でも、そんなことは絶対に言わない。


せっかく神様がくれた奇跡の時間を『勘違い』だと言われてしまいたくはなかったから。


だから私は静かに自分の胸の中にしまっておくつもりだ。


そして今日も電車に乗る。


全国ニュースで有名になった桜を見るためか、今日はいつもより乗客人数が多いみたいだ。


席に座ることができず、仕方なく入り口の近くに立つことにする。


片手でつり革を掴み、片手で単語帳を開く。


今日から本格的に受験生を再スタートさせるつもりだ。


だって、それが真琴ののぞみだから。


次の春に笑っていられるように、今できることを精一杯する。


それが私にできる最大限のお礼だった。


電車が大きく揺れて次の駅に停車する。