ファンタジック・バレンタイン

「ナコちゃんにお線香をあげさせてください。」



私が高梨君にそう申し出ると、高梨君がソファを立った。



高梨君の後を追ってリビングの隣にある和室へ入った。



その和室の奥に小さな仏壇が置いてあり、ナコちゃんの写真とマリーゴールドの花が供えられていた。



私はその仏壇のまえに正座をした。



お線香をあげ、そして手の平を合わせ、頭を下げた。



(ナコちゃん・・・。あなたはもう本当にこの世にはいないんだね。)



写真の中のナコちゃんは、やはりランドセルを背負って、楽しそうに笑っていた。



赤いランドセル・・・きっとお気に入りだったんだろうな。



そのナコちゃんの写真立ての隣に、白い猫の写真も飾られていた。



「このネコがミミちゃん?」



私が聞くと、高梨君が頷いた。



「ミミはナコが生まれる前から家にいたネコで、俺やナコにとってはペットというよりは兄弟みたいな存在で・・・。だから2年前に老衰で死んだとき、ナコは大泣きして大変だった。ナコもミミのところへ行くって。」



「・・・・・・。」