彼は私に鋭い視線を送ると、
『終わったら必ず戻って来い!逃げるなよ!』
そう言うと、元いた場所に座った。
私が彼に背中を向けて、救護に戻ろうとすると、
『ちょっと待て!』
彼は立ち上がると、厳しい表情で私に近づいて来た。
「まだ、何かあるの?」
もういい加減して!!!
そう思ったその時、
「えっ?きゃっ!ちょっ…何なのよ!」
彼は私を軽々と抱き上げると、何も言わずにどんどん歩いて行った。
堀口先生は手当てが終わったらしく、客室乗務員の入れたコーヒーを飲んで寛いでいた。
『マナ、お疲れさん、キミも…』
『ドクター、最後の怪我人…連れてきました。』
先生の言葉を遮って彼は私を静かに下ろした。

