「望愛、どうかした?」
挨拶に疲れパーティー会場の隅にいた私に、創介さんが声をかけてきた。

「いえ、賑やかだなと思っているところです」

ブランドショップのオープニングパーティーはホテル内に特設の会場を作り、有名人著名人や多くの報道関係者を招いて盛大に行われた。
いたる所でフラッシュがたかれ、歓声や笑い声がここまで聞こえてくる。

「そうだな。一時はどうなるかと思ったのに、無事にオープンできてよかった」

心配している様子なんて微塵も見せなかったくせに本心では不安だったなんて、いかにも創介さんらしい。

「そう言えば、さっき綾香さんもいらしてましたよ」

さすがに今日は来ないかなと思ったのに、姿を見かけてびっくりした。

「ああ、あれでも巷では有名人だからな。一応招待はしたんだ。嫌だったか?」
「いいえ」

創介さんと綾香さんの熱愛報道に始まった創介さんのスキャンダルも、気が付けばおさまっていた。
桃ちゃんの話によると、重さんが直接白鳥頭取と話して解決したらしい。
おかげでメインバンクである東京銀行との取引も変わらず続き、何事もなかったように静かになった。

「白鳥綾香の件ではじいさんいに力を借りてしまったな」
少し悔しそうな顔をする創介さんだけれど、
「そうですね。でも、何事もなく収まってよかったです」
無事で何よりだと私は思っている。

「フフ。何もない訳ではないんだがな」
創介さんの含みのある言い方。

「何かあるんですか?」
「まあ、今にわかるさ」

どうやらこれ以上は教えてくれる気がないらしい。