「…しんどい…」

「…俺、ここにみあちゃん置いて帰ったらダメな気がしてきた…」

結局、最後のピザは賢太郎くんとふたりがかりで兄の口に詰め込んだことでピザゲームを回避することができた。

賢太郎くんは最後までわたしの身を案じ、後ろ髪引かれまくり、兄に玄関の外に蹴り出されて渋々帰っていった。

____それから。電気、ガス、水道が通ったのかの点検があり、マンションの管理人への挨拶も済ませたわたし達。

気付けば日もどっぷりと暮れて、わたしは既に睡魔と戦っていた。

「みあ、風呂の準備が出来たぞ。さあ、一緒に____」

「……」

「みあ?」

わたしの様子に気付いた兄がスッとこちらに近付いてくる気配がして必死に瞼(まぶた)を開けようとしているのに、一向に開かない。

それどころか意識はどんどん深く沈んでゆく。

すると突然ふわりと浮遊感に襲われて、兄に抱き上げられたのだと解った。

「…ん、や…っ」

「大丈夫だ、みあ。何もしないから」

本当に?

ゆらゆらと体が揺れて、ぽふんと柔らかい物の上に寝かされた。

ああ、ベッドだ。

安心していると、優しくて大きな手がわたしの頭を撫でる。

その大きな手の温もりに更に安心したわたしは、そのまま意識を手放した。