私はまたくるりと背を向ける。

「茜」

「ん?」

背中越しに聞こえる隼人の声が、いつもよりあたたかくて優しい。

「何か俺にできることはあるか?…友達として…」

「友達なら「うん」ばっかりじゃなくて、もっとちゃんと慰めてよ」

「…分かった。お前、後から文句言うなよ」

隼人は、私の目の前にやってきて、泣いている私をそっと抱きしめた。

「これは友達としてだからな。俺は友達が泣いていたら、誰にだってこうするんだから。だからこれは大輝のとは違うからな」

「分かってるよ、バカ」

「鼻水つけるなよ」

「もうつけた」

「やめろ、ふざけんな」

隼人は私が「大丈夫」と言うまで腕の中にいさせてくれた。大輝に「抱きしめたい」と言われたときはあんなに悩んだのに、隼人に抱きしめられても何も悩まずただひたすら安心できた。きっと昔からの友達だからだろう。