「茜…これ…」
隼人の手には、林の中に投げられた私の巾着が握られていた。
「ありがとう、隼人が見つけてくれたの?」
「うん。携帯入ってるし」
「学校でもよかったのに…」
隼人は巾着を私の手に置いてくれる。私がごめんと謝ると、隼人はいたずらっ子っぽく笑って言った。
「だって、はやく電話したいだろ?」
「…誰に?」
「俺に」
「はあ?なんで隼人なんかに…」
隼人の煽りを受けて、私がいつものように言い返すと、彼はとても嬉しそうな表情をした。
「冗談だよ。よかった、いつもの調子が戻って。お前って大丈夫じゃないときにかぎって、大丈夫って言うやつだから。はやくアルファの奴らに電話してやれよ。きっとお前の声が聞きたくてうずうずしてるだろうから」



