【④】恋風のワルツ〜見習いお嬢さまと5人のイケメン御曹司〜


「茜…これ…」

隼人の手には、林の中に投げられた私の巾着が握られていた。

「ありがとう、隼人が見つけてくれたの?」

「うん。携帯入ってるし」

「学校でもよかったのに…」

隼人は巾着を私の手に置いてくれる。私がごめんと謝ると、隼人はいたずらっ子っぽく笑って言った。

「だって、はやく電話したいだろ?」

「…誰に?」

「俺に」

「はあ?なんで隼人なんかに…」

隼人の煽りを受けて、私がいつものように言い返すと、彼はとても嬉しそうな表情をした。

「冗談だよ。よかった、いつもの調子が戻って。お前って大丈夫じゃないときにかぎって、大丈夫って言うやつだから。はやくアルファの奴らに電話してやれよ。きっとお前の声が聞きたくてうずうずしてるだろうから」