「なんなんだ、あいつは」

「失礼なやつだ」

隼人の態度に呆れたみんなが口々に言った。

「彼、どこかで見たことがあるような気がして考えていたんですが、天鵞財閥の天鵞隼人ですよね、茜さん」

恭一郎さんに言われて私が頷く。

「隼人は、私の中学の同級生で、その時は財閥とかそう言うのは知らなくて…」

「ああ、俺、聞いたことあるよ。世界を知るために海外留学するのと同じように、日本を知るために普通の学校に行くって話」

「そういうことだったのかな…」

隼人はお忍びで来た大企業の御曹司には見えなかった。いつも泥だらけだったし、率先して学校を楽しんでいたように見えたけど。

「まあ、彼も婚約者を探さなきゃいけない年頃になったということでしょうね。なにしろ、天鵞財閥ですから」

婚約者、つまりいずれは結婚するってこと。そう思うと、ほんの少しだけ胸に引っかかった。