これぞまさしく王子様だ。仮面の王子は優雅に美しくお辞儀をして、私の前から離れた。踊り終えても、心臓がドキドキしたままだ。彼に声をかけてもらいたくて、女子たちが列を成している。

「あなた、私と踊りなさい」

割り込んできたのは、さっきまで学園の王子と話していたマリアだ。マリアの仮面は、マリアだと誰が見てもわかる仮面だった。

「かしこまりました」

彼は優雅にマリアの手を取った。踊りながらマリアの耳元でなにか囁いている。にこやかだったマリアの表情がこわばったように見えた。