「私はね、美咲の高校進学がチャンスだと思っているのよ。高校にいけば、美咲をいじめていた連中とも離れられるし、美咲もまたやり直せるんじゃないか?って、だから勉強だけは遅れないように伊東君に家庭教師をお願いしているの」



「分かりますけど、高校進学まであと一年以上もあるじゃないですか!美咲ちゃんのその貴重な一年を、今のまま不登校でいさせていいんですか!」


中学時代の一年は、きっと大人になってからの一年とは比べ物にならない位貴重な筈なんだ。それを、いじめなんかの為に棒に振るなんて、僕にはとても堪えられない。


僕は、美穂さんにこんな提案をした。



「それなら、美咲ちゃんに決断してもらいましょう!」



「美咲に?」



「そうです!これは美咲ちゃんの人生です。ならば、彼女の将来を左右するかもしれないこの決断は美咲ちゃん本人がするべきです!」



「でも、こんな大事な事を美咲に決められるかしら………」


「美穂さん、もっと美咲ちゃんを信じてあげて下さい!こんな大事な事だからこそ、本人にしか決められないんです!」


提案というより、殆んど懇願に近かった。何故僕は美咲ちゃんの将来にそれ程拘るのか…………それは自分でも分からなかったが、この事に関してはもうこれ以上一歩も譲る事は出来ない………そんな気がした。



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