「あら?歯切れがよくないみたいね、何か問題でも?」


美穂さんは、すぐに僕の態度の変化に気が付いた。この人、意外と鋭い。



「大丈夫です!今週中にでもバイト見付けて、家賃は絶対に延滞しないようにしますからっ!」



「なるほど、そういう事………」



「あ……………」


無職なのが美穂さんにバレてしまった!嘘をつくのが嫌で、思わず言ってしまったけどさすがにこれはまずかったかな………


美穂さんは、何か考えている様だった。冷静に考えてみれば、こんな条件で賃貸契約なんて交わすお人好しがいる筈が無いだろう。


「伊東君………キミ、最終学歴はどこ? 」



美穂さんは、何を思い付いたのだろう?突然僕の学歴を訊いて来た。


「え〜僕の最終学歴は………東京………の大学です………」


嘘は言っていない。ただ、少し付け加える事があるとすれば、東京の【三流】大学という事だ。



大学の頃、『どこの大学?』と聞かれた時に『東京の大学だけど、東大ではないよ』という自虐の意味も含めた、僕ら同窓生の間でよく使われた受け答えだった。



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