大家さんは、僕の事をすっかり見抜いている様子だった。勿論、僕が現世から飛ばされて来た事までは知らないだろうが、さしあたって大至急住む所を見つけなければならない事には気付いているようだった。


「はい、美穂さんのおっしゃる通りです。出来れば今日からでもこちらに住まわせていただけたらありがたいのですが………」



『美穂さん』なんて、少しなれなれしいかとも思ったが、大家さんを見ていると、『美穂さん』という名前がぴったりに思える。さっきは四十代だと思ったが、もしかして、僕より少し年上なだけなのかも………



「それでは、単刀直入にいいましょう。コーポ白石は家賃が六万円、敷金礼金はナシ………そして、居住の条件は『他の居住者とトラブルを起こさない事』ですが伊東君、見た感じ善良そうだし問題は無いわね?」


「無い………と思いますが………」



ホントはあった。何しろ、仕事が決まってないのだ…….…まぁ、やりがいとか面白さとかいう贅沢をいわなければ家賃を払って生活していくだけの仕事は見つかると思うのだけど………



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