「すいません、車を盗まれてしまったんですけど………」



最寄りの交番に行き、まずは警察官に車が盗難に遇った事を告げる。



「えっ、車を盗まれた?それは災難だったね」



警官は、それ程驚く様子でもなく僕に事務的な同情の言葉をかけると、机からバインダーを持ち出して調書をとる準備を始めた。



「あの、よくあるんですか?その……車の盗難事件って………」



「いや〜そんなにしょっちゅうは無いけれど、無い事は無いよ。たまにあるね。盗まれたのは、自宅?………あ、これに住所と名前を書いてくれる?」



「いや、すぐそこの山の麓の駐車場ですけど………」



「え〜っ!そこの駐車場って………そんな出先で盗難なんて、普通無いけどなぁ………」



「でも、さっきは無い事は無いって………」



「自宅ではね………自宅だったら、夜中から朝までとか、持ち主に気付かれるリスクの低い時間帯がある。けれど、出先の場合はいつ持ち主が戻って来るか分からない………そんなリスクの高いところで、車の盗難なんてやらないよ普通」



言われてみれば………だったらどうして僕の車は盗まれたんだろうか?



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