渡り廊下を歩いているとき、俺を抜かしていった妃野がなぜか中庭の方を見て立っていた。



「ちょっと……!」



そっちに向かって声を上げるから何事かと思ったら、どこかのクラスの男子生徒がホースで水遊びをしていた。

しかも、その水が妃野のほうに飛んできて……。



「妃野……!」



俺は教科書もペンケースも、持っているもの全部投げ捨てて妃野の背中を抱きしめた。

その瞬間、冷たい水を背中から浴びた。



「と、戸松くん……!?」



俺の腕の中で名前を呼ぶ妃野。



「水かかってない?」

「う、うん……」



必死に呼びかければ、小さく返事をした。

……よかった。
被害は最小限に抑えられた。



「わたしよりも戸松くん、濡れちゃって……」

「俺はへーき」