幸せなため息をつくように、莉恋ちゃんは戸松くんをうっとり見た。 莉恋ちゃんの言うとおり、噂では〝勉強にしか興味なくて冷たいけどクールでかっこいい〟って聞いてた。 さりげなく優しい戸松くん。 みんなからモテるのもわかる気がする。 「……あ!」 なにかを思い出した莉恋ちゃん。 「どうしたの?」 「今日、移動教室じゃん……」 1限目は化学の授業だっけ? 「うん。教科書忘れちゃった?」 「めっちゃ寒い中、あの渡り廊下を通らなきゃいけないと思って……!」