軽快な可愛い音楽が鳴りながら、ガラスの中のクレーンが動き出した。
さくらは、
『死神でもクレーンゲームは楽しめるんだろうか。』
と思っていると、案の定、クレーンでぬいぐるみは掴んだものの、そのまま途中で落ちてしまった。
大きなぬいぐるみは軽く移動しただけで、死神初のクレーンゲームの挑戦は失敗に終わった。
「あ~あ。」
と、さくらの残念そうな声が漏れた。
「もう一回!」
真一がそう言うと、さくらは、ケタケタと笑いながら、
「はいはい。」
と言って、追加の小銭を投入した。
1回目は失敗に終わったが、真一が思っていたより、楽しめているようで、死神でもクレーンゲームにハマるんだと思うと、さくらは笑顔になった。
真一は、再び、真剣な眼差しでクレーンを見つめながら、ボタンを操作していた。
すると、今度は、クレーンが掴んで持ち上がったぬいぐるみが、重さで一回転してから、ボトンと音を立てて、取り出し口に落ちた。
「えー!!真一、すごいっ!!」
まさか取れるとは微塵も思っていなかったので、さくらは興奮しながら、取り出し口から大きなぬいぐるみを取り出すと、
その大きなぬいぐるみをうれしそうにギュッと抱きしめた。
さくらはキャッキャッと喜んでいたが、はっと我に返ると、
「あっ、ごめん、真一のだ。」
と言って、大きなぬいぐるみを真一に差し出した。
「いや、俺はいらないだろ。そもそもさくらのお金だし。」
と、真一は笑いながら言った。
さくらも笑顔で笑いながら、
「じゃあ、遠慮なく。それにしてもぬいぐるみが回転してくれてラッキーだったね!」
と言った。すると、真一が、
「いや、回転させたんだよ。1回目で取り出し口の近くに移動させて、2回目でわざと回転させて落としたんだよ。」
「え?そんなことが出来るの?クレーンゲーム、初めてなんだよね?」
「初めてだけど、普通に重心の位置が分かれば、あとは物理だろ。」
「ああ、なるほどね・・・。」
さくらはとりあえず分かったような返事をしたが、実際のところはよく分かっていなかった。
『運じゃないんだ。よくわからないけど、真一は、勉強出来る系の死神ね。』
と、さくらは思った。
すると、そこにゲームコーナーの店員が大きな袋を持ってきて、
「彼氏さん、クレーンゲームとってもお上手ですね!彼女さんもデートの記念になりましたね。よかったらお使い下さい。」
と言って、ぬいぐるみが入るサイズの大きな袋を差し出した。
「ありがとうございます。」
と、さくらと真一は店員に御礼を言うと、大きな袋を受け取り、真一が手を入れ袋を広げると、さくらは、そこにぬいぐるみを入れた。
『はたから見たら私たち彼氏彼女に見えるんだ。』
と、さくらは、店員から「彼氏」「彼女」と言うワードが出てきたことが、少しこそばかった。
そして、「彼氏さん」と定員に呼ばれた真一が、特に否定もせず、その呼ばれ方を受け入れていたことに、
さくらはちょっぴり嬉しくなった。
