さくらが進む方向の先に、再びちらほらと黒い煙が見え始めた。
『嘘でしょ…。私また走って逃げるの?!・・・・。』
そう考えるだけで、さくらの足取りは重くなり、ずっしりと、まるで両肩に石が置かれたかのように身体全体も重くなった。
『なんで真一に消えてなんて言っちゃったんだろう・・・。ほんとはそんなこと思ってなかったのに・・・。』
さくらは、恥ずかしさといろんな気持ちが入り混じり、自分でもよくわからない気持ちのまま、
思ってもいない言葉を真一に投げつけてしまったことを後悔した。
さくらは下を向き、ため息をひとつついた。
そして再び顔を上げると、さっきまで見えていた黒い煙が消えていた。
『あれ?なんで?』
そう思った瞬間、さくらの背後から声がした。
「おまたせ!」
さきほど消えたはずの真一が、黒ずくめの服から一転、Tシャツに綿パンというラフなスタイルで立っていた。
「え?なんで?」
さくらが呟くと、真一が、
「これならちゃんと周りにも俺の姿が見えてるから、一人で喋ってるようには見えないよ。」
と笑顔で言った。
黒ずくめの時もそれはそれで格好よかったが、背も高くスタイルがいいので普通の服も格好良く着こなしている。
よく似合っていて今度は爽やかな雰囲気になる。
さくらは、戻って来てくれた真一に嬉しさを隠すように、
「じゃあ、ちょっと駅前のショッピングモールに行くから付いて来て。」
と言った。
真一は、
「おう!」
と言うと、そのままさくらの横に並ぶと、いたって自然にさくらの手を取り、手を繋いだ。
「ええ???なんで?」
さくらは真っ赤になりながら慌てて真一に聞くと、
「マーキングが出来ない以上、こうやって接触してるのが一番安全だから。」
と言った。
「わ、分かったけど、とりあえず、次からは何でもいいから先に説明して。」
と、さくらが言うと、真一は手を繋いだまま、
「分かった。気を付けるよ。」
と言って、さくらに合わせてゆっくりと歩き出した。
『はたから見たら、私たち、付き合ってるみたいに見えるのかな・・・。だって手つないでるんだよ???』
と、考えながらさくらは恥ずかしそうに、つないでいる手を軽く握り返し、少し俯きながら歩いた。
