真一の両腕は、公園のベンチに座っているさくらを挟むようにベンチの背もたれの上に置かれていた。
さくらの身体と、真一の腕の間には少し空間があった。
真一の腕は、決してさくらの身体に触れてはいなかったが、真一の両腕に挟まれ、さくらは逃げようがなかった。
しかしさくらは、真一の美しい顔面の威力に耐えられず、少しでも距離をとるべく、
出来うる限り身体を後ろに反すと動揺しながら
「な、な、なに?!」
と、真一に聞いた。
真一の視線はさくらの鎖骨の方を見ていた。
「なんでマーキングが消えてるんだ?」
と、真一は不思議そうにさくらに聞いた。
「え?あ、ああ。そういえば、虫刺されのクリームを塗ったからかな。」
「ふっ、俺は虫扱いかよ。いや、それくらいじゃ消えないよ。学校以外にどこかに行ったか?」
虫という言葉に真一は少し笑いながらさくらに聞いた。
「ああ、昨日病院に行ったくらいかな。」
さくらも真一を虫扱いするつもりはなかったが、真一にそういう風に受け止められたことに対して、さくらも少し笑った。
「それだ。病院に行ったせいで、予定より早く聖力がなくなったんだ。しょうがない。もう一回・・・。」
と、言いながら真一が、また前と同じ場所にキスマークを付けようと、さくらの鎖骨に顔を近づけてきた。
さくらは、ぐいっと真一の肩を押し返して、
「ちょっと!こんなとこで何しようとしてるのよっ!!」
「このままじゃ、危ないから、マーキングしようと・・・。」
「信じらんない!こんなところでありえないっ!!」
さくらは怒り気味に言った。
「大丈夫。俺の姿はさくら以外には見えてないから。」
「そんな問題じゃないのよ!え?ちょっと待って。見えてないってことは私、今一人で喋ってる感じになってるの?」
「まあ、そういう感じかな。」
さくらは、はっとして辺りを見回した。
幸い人はまばらだが、ちらちらと不思議そうにこちらを見ながら公園内を散歩している人もいる。
『最悪だ・・・。私ヤバい人認定じゃん・・・。』
さくらはすっと立ち上がると、恥ずかしさと周囲の目から逃げるように、
真一を置いてスタスタと早歩きで何も言わずに公園を出た。
