「大丈夫か?」
さくらは聞き覚えのあるその声に、荒い呼吸を押さえながら恐る恐るゆっくり目を開け辺りを見回した。
そこにあったはずの大きな真っ黒い煙の塊は跡形もなく消えていた。
そしてそこには、真一が立っていた。
先ほどのさくらが大きく真っ黒な煙の塊にのみ込まれそうになったその時、シューっという音と共に、真一が現われ、
さくらと大きく真っ黒な煙の塊の間に割って入り、掌をそれに向けると一瞬で消し去ったのだった。
真一はさくらに、掴めといわんばかりに手を差しのべていた。
さくらは全速力で走ったせいで息が上がっていたが、真一には頼らず、なんとか自力で膝に手を置きながら、ゆっくりと体を起こし、
立ち上がった。
「だ、大丈夫。」
さくらは息も切れ切れに答えた。
立ち上がったさくらの膝は擦り傷だらけになっており、傷口から血がにじみ出ていた。
真一はその傷に気がつくと、申し訳なさそうな声で、
「ケガしてるな。どこか・・・。」
ドラッグストアでも探してるのか、真一がそう言いながらキョロキョロと辺りを見渡した。真一が悪いわけでもないのに、
さくらの方こそ申し訳ない気持ちになった。
しかし、ここはまだ住宅街。お店は一軒もない。
「わたし、絆創膏持ち歩いてるから。公園で傷口だけ洗えれば大丈夫。」
そう言ってから、さくらはバッグの中からミニ水筒を取り出すと、ゴクゴクとカラカラになった喉に流し込んだ。
まだまださくらの心臓の鼓動も早く喉も痛い。
さくらは頑張って出来るだけ平気なフリを装って大丈夫と言ったが、本当は大丈夫ではなかった。
あくまでさくらの自論だが、擦り傷が一番痛い。
ただ、転んだことが恥ずかしくて、何でもない風を装った。
黒い煙は消え去ったが、先ほどの恐怖はまだ消えていない。
この辺りは、さくらも知った道である。少し歩けば公園があるはずだ。
さくらと真一はゆっくりと歩き出した。真一が息の上がっているさくらに合わせてゆっくり歩いてくれたのだ。
「用意周到だな。いつも水筒や絆創膏を持ち歩いてるのか?」
「うん。いつも携帯、ハンドタオル、ティッシュ、絆創膏、ミニ水筒は持ち歩いてるの。」
さくらは指を折りながら言った。
しかし本当はこの他に推しのマスコットも入っている。
一人の時や推し活を理解してくれる友達の前では堂々とマスコットと一緒に、写真を撮ったりしていたが(自分は写らず、
推しのマスコットと被写体だけ)、真一にどう思われるかが不安であえて推しのマスコットのことは言わなかった。
絆創膏も、もし必要になった時に、他人に持っているか聞くことに抵抗があり、なかなか言えない性質だから、
自分で持っていた方が手っ取り早く、周りに頼らなくていいからだ。
「すごいんだな。尊敬する。」
「すごくないよ。普通だよ。」
水筒も単に自販機でお茶やお水を買うのが勿体ないなと思っているだけなのだ。
消えるものに出来るだけお金は使いたくなく、節約できるところは節約し、推しに貢ぎたいからだ。
そうこう話しているうちに公園に着いた。さくらの息もすでに整っていた。
さくらは公園の水道で傷口を洗うと、濡れたところを軽くタオルで拭き、近くのベンチに腰掛けた。
バッグから絆創膏を取り出し、フィルムを開けようと両手の親指で開こうとするが、先程の恐怖がまだ残っており、
指がかすかに震えて、なかなか上手く開けられない。さくらが奮闘していると、真一がそっとさくらから絆創膏を取り上げた。さくらが真一の方を見上げると、
「俺がやる。」
真一はそう言うと、さくらの座っている前にしゃがみこんだ。
治まっていたはずのさくらの胸の鼓動が再び早くなった。さきほどの恐怖がまだ残っているのだろうか。
そんなさくらをよそに真一はスムーズに絆創膏を開けると、さくらの傷口の上にそっと貼った。
真一の手が、かすかにさくらの膝に触れた。なぜだかその部分から熱を帯びていく感覚に陥った。
さくらは貼られた絆創膏を見つめていた。
絆創膏を貼り終えた真一はすっと立ち上がると、さくらに顔を近づけた。
「え?」
さくらは突然、美しい顔面が自分の目の前に近づいたことに驚き、真っ赤になった。
さくらは聞き覚えのあるその声に、荒い呼吸を押さえながら恐る恐るゆっくり目を開け辺りを見回した。
そこにあったはずの大きな真っ黒い煙の塊は跡形もなく消えていた。
そしてそこには、真一が立っていた。
先ほどのさくらが大きく真っ黒な煙の塊にのみ込まれそうになったその時、シューっという音と共に、真一が現われ、
さくらと大きく真っ黒な煙の塊の間に割って入り、掌をそれに向けると一瞬で消し去ったのだった。
真一はさくらに、掴めといわんばかりに手を差しのべていた。
さくらは全速力で走ったせいで息が上がっていたが、真一には頼らず、なんとか自力で膝に手を置きながら、ゆっくりと体を起こし、
立ち上がった。
「だ、大丈夫。」
さくらは息も切れ切れに答えた。
立ち上がったさくらの膝は擦り傷だらけになっており、傷口から血がにじみ出ていた。
真一はその傷に気がつくと、申し訳なさそうな声で、
「ケガしてるな。どこか・・・。」
ドラッグストアでも探してるのか、真一がそう言いながらキョロキョロと辺りを見渡した。真一が悪いわけでもないのに、
さくらの方こそ申し訳ない気持ちになった。
しかし、ここはまだ住宅街。お店は一軒もない。
「わたし、絆創膏持ち歩いてるから。公園で傷口だけ洗えれば大丈夫。」
そう言ってから、さくらはバッグの中からミニ水筒を取り出すと、ゴクゴクとカラカラになった喉に流し込んだ。
まだまださくらの心臓の鼓動も早く喉も痛い。
さくらは頑張って出来るだけ平気なフリを装って大丈夫と言ったが、本当は大丈夫ではなかった。
あくまでさくらの自論だが、擦り傷が一番痛い。
ただ、転んだことが恥ずかしくて、何でもない風を装った。
黒い煙は消え去ったが、先ほどの恐怖はまだ消えていない。
この辺りは、さくらも知った道である。少し歩けば公園があるはずだ。
さくらと真一はゆっくりと歩き出した。真一が息の上がっているさくらに合わせてゆっくり歩いてくれたのだ。
「用意周到だな。いつも水筒や絆創膏を持ち歩いてるのか?」
「うん。いつも携帯、ハンドタオル、ティッシュ、絆創膏、ミニ水筒は持ち歩いてるの。」
さくらは指を折りながら言った。
しかし本当はこの他に推しのマスコットも入っている。
一人の時や推し活を理解してくれる友達の前では堂々とマスコットと一緒に、写真を撮ったりしていたが(自分は写らず、
推しのマスコットと被写体だけ)、真一にどう思われるかが不安であえて推しのマスコットのことは言わなかった。
絆創膏も、もし必要になった時に、他人に持っているか聞くことに抵抗があり、なかなか言えない性質だから、
自分で持っていた方が手っ取り早く、周りに頼らなくていいからだ。
「すごいんだな。尊敬する。」
「すごくないよ。普通だよ。」
水筒も単に自販機でお茶やお水を買うのが勿体ないなと思っているだけなのだ。
消えるものに出来るだけお金は使いたくなく、節約できるところは節約し、推しに貢ぎたいからだ。
そうこう話しているうちに公園に着いた。さくらの息もすでに整っていた。
さくらは公園の水道で傷口を洗うと、濡れたところを軽くタオルで拭き、近くのベンチに腰掛けた。
バッグから絆創膏を取り出し、フィルムを開けようと両手の親指で開こうとするが、先程の恐怖がまだ残っており、
指がかすかに震えて、なかなか上手く開けられない。さくらが奮闘していると、真一がそっとさくらから絆創膏を取り上げた。さくらが真一の方を見上げると、
「俺がやる。」
真一はそう言うと、さくらの座っている前にしゃがみこんだ。
治まっていたはずのさくらの胸の鼓動が再び早くなった。さきほどの恐怖がまだ残っているのだろうか。
そんなさくらをよそに真一はスムーズに絆創膏を開けると、さくらの傷口の上にそっと貼った。
真一の手が、かすかにさくらの膝に触れた。なぜだかその部分から熱を帯びていく感覚に陥った。
さくらは貼られた絆創膏を見つめていた。
絆創膏を貼り終えた真一はすっと立ち上がると、さくらに顔を近づけた。
「え?」
さくらは突然、美しい顔面が自分の目の前に近づいたことに驚き、真っ赤になった。
