3日目(金)
母の心配をよそに、さくらはいつも通り登校した。
さくらは真一とのゲームがあるため、思っていたよりも、登校することに抵抗はなかった。
そのことについてはさくら自身も驚いていた。
通学路にも、学校にも、うじゃうじゃとあの黒い煙を見かけたが、さくらを避けるように逃げて行ったり、消えたりした。
さくらは心置きなく、ボブとツインテールの二人組を探しながら、登校した。
しかし、それらしき二人組は全く見当たらなかった。
『まあ、登校時間もバラバラだし、そう簡単には見つからないか・・・。』
などと、考えながら、校門を通過した。
さくらは話題の中心人物だったが、顔までは割れていない。誰もさくらのことは気にもせず、
いつも通り登校することが出来た。
しかし、その平穏も教室に入るまでだった。
女性アイドルの振り付けを全力で踊っている男子二人、それを見て腹をかかえて大笑いしている数人の
男子たち。
「ぎゃはははは!」
「なにやってんだよ!」
他にも、すでに教室には多くの生徒が登校しており、
「宿題やってきた?」
「やってない」
「俺やってきた」
「見せてー」
「昨日配信見た?」
「見た見た~」
コンパクトミラーで自分の前髪をいじりながら、
「さいあくー、前髪調子わるー」
「わたし今日、肌めっちゃ乾燥してる~」
朝の話し声で賑やかな教室が、さくらが一歩、教室に足を踏み入れただけで、しーんと
静まり返った。
教室にいた生徒全員の視線が一斉にさくらに集まった。
『気にしない気にしない・・・』
心の中で呟きながら、さくらは、下を向いたまま自分の席に向かって歩き出した。
すると、すぐにまた賑やかな話し声が復活した。
さくらが自分の席に座ると、あまり会話をしたことのないクラスメイトの女子が3人、さくらの机の周りにやって来た。
「大変だったね~。香山さん。」
「ケガはもういいの?」
『私が外されてぼっちの時は見て見ぬふりをしていたのに、私から何を聞き出そうと
してるんだろう。とりあえず、ゲームは始まっている。この人達は、まさか私が生死を彷徨っているなんて
考えもしないだろう。目撃者ではないが、チャンスがあればありがとうと言っておこう。』
さくらは人見知り光線が発動し、警戒しながらも、小さな声で(さくら本人は大きな声のつもり)
「もう、大丈夫。ありがとう。」
と言った。
すると、3人のうちの1人が、
「事故の時一緒にいた香山さんの友達2人、停学中だよ。」
「そうなんだ・・・。」
「うん、だから安心して過ごせるね。」
キーンコーンカーンコーン
「あっ、チャイム。じゃ、香山さん、また。」
と言って、3人は各々席に戻って行った。
何か理由があって私に声をかけたんだろうとは思うが、ぼっちを覚悟していたさくらは、
向こうから話しかけてきてくれたことが、ほんのちょっとうれしかった。
