エッーーー???
さくらは真一の手を咄嗟に払いのけると、自分の襟元を隠すようにうずくまった。
そしてその姿勢のまま、
「な、何しようとしてるのよっ!!」
と、真一に向かって怒鳴った。
「だから、マーキングだって。しるしをつけるって言ったけど?」
「ど、どこにつけようとしてたのよっ!!」
さくらは自分の襟元を握りしめ、うずくまったまま、顔だけを真一に向けて怒鳴った。
「魂を守る為にできるだけ心臓に近いところがいいんだよ。」
真一は真顔で言った。
「先に言いなさいよっ!で、心臓に近いところって・・・?」
「胸のあたりかな。」
「キャー!変態!無理無理無理!今すぐ出て行って!」
さくらは左手で枕をぶんぶんと振り回した。
「別にいいけど、また狙われるよ。しかも、学校はさっきみたいなのがうようよどころかうじゃうじゃいるよ。
悪意がたまりやすいからね。」
さくらは振り回していた枕の動きを止めると少し考えた。
「悪意が?」
「ああ。」
「うじゃうじゃ?」
「ああ。」
さくらは少し考えてから再び口を開いた。
「さっき、心臓に近いところって言ってたよね?」
「ああ。」
「首とかでもいいの?」
「いいけど・・・。」
真一は少し戸惑った様子だった。
「何か問題でも?」
「ちょっとしるしが残るから・・・。外から見えるところは・・・。」
あきらかに真一が戸惑っている様子だった。
さくらは最初は気づかなかったが、はっとした。
「あの、もしかしてしるしってマジックとかで書くんじゃなくて・・・。」
「うん。キスマークってやつになるのかな。」
「キ、キ、キスマーク?!」
さくらのヲタク気質の片寄った思考から、ペンで悪魔避けのマークを書くとばかり思っていた。ペン先が細いマジックなら目立たないだろうと勝手に思い込んでいたのだ。
まさか唇でしるしをつけるとは想像もしていなかった。
彼氏いない歴と年齢が同じで、男の子と手を繋いだ記憶は幼稚園のお遊戯以降ない。
そんな人間にいきなりキスマークとは、あまりにもハードルが高すぎる。
でも、あの黒い煙を思い出すと怖くて寒気がする。しかし背に腹は変えられない。あんな黒い塊に魂を取られるなんて考えたくもない。
『ここは覚悟を決めて・・・。心臓に近くて見えない場所、心臓に近くて見えない場所・・・』
さくらは考えをめぐらせた。
そして、自分でパジャマの上着の襟元を少し下げた。
「鎖骨の下でお願いします。」
と、さくらは真っすぐ真一を見つめながら覚悟を決めた口調で言った。
