「あっ!、えっとそのこれは・・・。」
さくらは取り乱した。何て説明すればいいのか、いや、説明しても分かってもらえるのか?
部屋に男性がいるのだ。さらに黒ずくめで、どこからどう見ても、あきらかに不審者だろう。
しかし、母は真一には目もくれずに、
「眠れなければ明日病院で先生に相談しましょう。眠れるお薬を出してくれるかもしれないし。」
と言いながら、真一の前を素通りし、さくらを寝かせると再び布団をかけた。
「おやすみ」
と言って、母は部屋を出た。
さくらは、母が階段を降りていく音を確認すると、再び飛び起き、
「どういうこと?!なんでママは真一に気づかなかったの?」
と、小声でまくし立てるように聞いた。
「とりあえず、人間には俺の姿を見えなくしてるんだ。」
「じゃあ、私だけ見えてるってこと?」
「今のところそんな感じ。たまに勘の鋭い人間には見えるみたいだけど。」
「まあ、なんとなく分かった。じゃあ、さっきの黒い煙は?ちゃんと説明して!」
「ええと、まず、今さくらの魂はあの世にもこの世にもない。」
「死んでないし生きてもないってこと?」
「まあ、簡単にいうとそういう感じ。さくらの魂は生と死の間の世界にある状態なんだよ。
だから見えないものが見えるってこと。」
さくらはぶるぶると震え出しながら質問を続けた。
「じゃあ、さっき私が見た黒い煙は幽霊ってこと?」
「いや、さっきのは人の負の感情や悪意が固まったものって感じ。」
「なにそれ。」
「まあ、生と死の間の世界には、成仏出来ない魂や、あとはさっき言ったように、人の負の感情の集まりがうようよしてるってこと。とりあえず、どっちつかずの君のような魂は非常においしいから狙われやすいんだよ。」
「はあ?そんなの聞いてませんけど!ゲームの説明になかったわ。なんで最初に教えてくれなかったのよ!」
そんな恐ろしい状態に放り込まれるなんて、ゲームの説明になかった。
「まあ、そういうわけだから、ちょっと我慢してくれる?」
と言いながら、真一はさくらのベッドに膝をつきながら上がってきた。
「ちょっ!なに?なに?」
「非常に申し訳ないんだけど、マーキングさせてもらう。」
「マーキング?マーキングってあの犬が散歩の時に電柱や木にかけてまわる・・・あれ?」
とさくらが聞くと、真一は黙って頷いた。
「いやいやいやいや、無理無理無理無理!」
さくらは、全力で拒否した。
「おおまかにはそうだけど、ちょっと違うかな。さくらの魂は既に俺のものだから
手出しするなっていうしるしみたいなものをつけたいんだ。そしたら、雑魚にはもう狙われない。」
しるしか・・・。そのくらいなら。私も中学の頃はよく手の甲に大事なことを忘れないようにメモ書きしたことがある。
「ええと、よく分からないけど、そういうことなら、お願いします。」
と言ってさくらは座り直すと左手を突き出し、手の甲を真一の前に出した。
「じゃあ、失礼して。」
と言いながら、さくらの左手をよそに、真一はさくらの襟元に両手を伸ばすと、パジャマの上着の一番上のボタンを外し始めた。
「え?」
さくらは、自分が何をされようとしているのか、一瞬状況がのみ込めなかった。
