1時間くらい滞在してお店を出た。
このカフェは隠れ家のよう。
学校から徒歩2、3分という近さなのに、うちの生徒が利用するところを見たことがない。
だから、学校終わりに夏見くんと待ちあわせするのにちょうどいい。
「このまま帰る?」
「うーん……どこか遊びに行きたい」
「じゃあちょっと遠くなるけど、吉葉さんが見たいって言ってた限定公開の映画見る?」
「うん」
夏見くんとつき合ったときの話には続きがある。
つき合うことになったけれど、そのあとに夏見くんから言われたお願い。
“つき合うこと、学校では秘密にしていい?”
待ちあわせをするのに、生徒が来ないカフェを使う。
なるべく知りあいに会わないよう遠くへ遊びに行く。
わたしたちのおつき合いは、みんなに秘密にしている。
理由は知らない。
教えてもらえなかった。
夏見くんと一緒にいるのは楽しいけれど、
“どうして秘密にしないといけないんだろう?”
それだけが引っかかっている。



