彼氏がヒミツにする理由


大切なものを包みこむように紡がれた言葉。

わたしは無意識にぎゅっと手に力を込めていた。



「夏見くん、」

「ん?」

「さっき思ったんだけど……」



脳裏をよぎる、声と言葉。


“俺が好きなのは吉葉さんだけだから”



「夏見くんに初めて“好き”って言われた」

「そうだっけ?」

「うん。……それで気づいたんだけど」



わたしは歩みを止めた。

夏見くんも立ちどまって、手を繋いだまま向かいあう。



「わたしも言ってなかったなって」



話の流れでなにを言われるのか察したんだと思う。夏見くんは目を開いた。

そんな彼に、わたしは想いを告げる。



「好きです」



自然と笑みがこぼれていた。

あまりに照れくさくて。

そんな感情をごまかしたくてこぼれた笑み。