カランコロンと昔ながらの音を響かせて、こじんまりとしたカフェに入った。
瞬間的に漂ってくるのはコーヒーの香り。
嗅ぐだけで渋みを感じるような、そんな背伸びをしたくなる香りだ。
店内にはテーブル席が4つとカウンター席が6つあるだけ。
切り盛りしているのはカウンターの向こう側にいるマスターと、
「いらっしゃいませ」
奥から出てきた20代の女性店員さんの2人。
隠れ家のような店だと、初めて入ったときに思った。
今日は2回目の来店。
「あっ……待ち合わせですか?」
まだ2回しか来ていないなのに、もう顔を覚えてもらっちゃった。
「はい」と答えると、店員さんは「どうぞ」と案内してくれた。
多くのお客さんがいて、ざっと見たところカウンター席に空席が2つあるだけ。
わたしは、4つあるテーブル席のうちの1つ、制服姿の男子が座っている席に向かった。
「遅くなってごめんね」
謝りながら彼の前に座る。



