その日の夜、夏見くんから電話が来た。
試験勉強があって遊びに出かけられないし、学校でも話せない。
だから、夜の決まった1時間だけ夏見くんと電話する約束をした。
『テスト勉強はどう?』
「全然だめ。ちゃんと授業聞いてたはずなんだけど、けっこう忘れてる。夏見くんは余裕でしょ?」
『そんなことないよ。学年末は範囲広いし』
外は窓が軋むほどの風が吹き荒れていて、ガタガタと音がする。
けれど、耳元には夏見くんの声があって。
夏見くんと話しているだけで安心感に包まれる。
外の暴風も気にならない。
『今日の昼休み、吉葉さんテニスコートにいた?』
ふと、話が途切れたタイミングで夏見くんが聞いてきた。
「うん、いたよ。今晩は風がすごくなるからって、ネットを片すように言われたの」
『そうなんだ。じゃあやっぱり、あれは吉葉さんだったんだ』
夏見くんに見られてたんだ……。
恥ずかしい行動を取っていないかな?
『そういえば、中学のときネット片づけるのに苦労してたことがあったよね』
あのときの自分を思い返してみて、大丈夫だ!ってなったとき、夏見くんが話の続きを始めた。



