――ホワイトデー当日――



「さゆき、これホワイトデーのプレゼント」


スッと目の前に、鍵のついたキーホルダーが差し出された。


「ホワイトデーのプレゼントはもう指輪を貰ったよ?」

「これも受け取って欲しい」

「何の鍵?」


ニコッと拓斗が微笑んだ。


「大学の近くでマンション借りた。一緒に暮らそう」

「ぇ、無理無理無理無理っ!」


思いきり首を横にブンブン振る。


「家賃なら心配いらないよ。俺投資してて、けっこう利益出てるから」

「そ、そういう問題じゃなくて。お父さんに絶対反対されるから!」


大学まで片道二時間近くかかるからひとり暮らしをしたいって、二年前親に相談したけど許してもらえなかったもの。


しかも男と暮らすなんて、心配性のお父さんが許すはずない。


「それなら大丈夫だよ。さゆきのご両親から許可は貰ってる」

「ぇ、反対されなかったの!?」


お父さん、私がひとり暮らししたいって言っても絶対に許してくれなかったのに!?


「反対どころか、喜んでもらえたよ」


ぁぁ、そうだった。拓斗は私の両親から全面的に信用されているし、私の両親は拓斗の事が大好きだ。


「それなら問題ない……のかな……?」


そう呟いた私の顔を見て、拓斗がフッと笑う。


「一緒に暮らすなら、今度こそ俺のファーストキスをもらってほしいけど、いい?」


その時は俺きっと途中で止まれないから覚悟して、と耳元で囁かれ、ボンッと火が点いたように顔が熱くなった。







『高校卒業祝いに俺のファーストキスをもらってほしい!?~年下のイケメン幼なじみからお願いされた件~』


 【本編 完】


 ※おまけの話~side拓斗~が少しだけ続きます。