「拓斗、それなら他に何か欲しいものないの?」

「無いよ。いつもそばにいてくれてるだけで充分」


そうね、家族の愛情ってそういうものかもしれない。


でも私は、卒業おめでとうっていう気持ちだけじゃなくてお祝いに何か渡してあげたい。


「ね、遠慮しないで欲しいもの言って」

「遠慮なんかしてないよ。あ、そうだ」


立ち上がると、拓斗は机の引き出しを開けてベロア素材の小さな四角い箱を取り出した。


「これ、ホワイトデーに渡そうと思って買っておいた指輪。ホワイトデーには二週間くらい早いけど、来週の合コン行くならつけていって欲しいから今日つけさせて」


そう言って拓斗が私の薬指にスッとはめたのは、ダイヤのついた可愛らしいデザインの指輪。


「合コンでさゆきに変な男が寄ってこないように、お守り」